友人に金を返しに行く

先週の金曜日、かなり久々に飲みにいった。メンツは皆古い友人たちだ。

席には3年ぶりの友人がいた。いつもつるんでいた4人のうち、ただ一人男性の友人だ。いっときは月イチで集まっていたのだが、ある時を境に連絡がつかなくなっていた。彼と会わない間に、一人は仕事をやめ、一人は結婚し、残りの一人は離婚した。

以前とは少しだけ話題が異なるものの、席はそれなりに盛り上がり、順調へ二次会へ進んだ。

 

ご多分に漏れず恋愛の話になった。彼は真剣な顔で「僕、結婚に向かないとおもうんだよね」と話した。彼女はいるものの、集団生活には向かないと自覚しているという。

温和すぎるほど温和な彼の話に、私達はなんだか分からない気持ちになった。

LINEに返信をくれなかった3年の間に、彼にもいろいろなことがあったのだろう。週3で飲みに行っているらしい彼は私達の代金をササッと払ってくれて、私達はじゃあと別れた後にそれに気づいた。

 

友人に金を借りるわけにはいかないので、予定があった一人を除いて、私ともうひとりの友人は二人で返しに行くことに決めた。「鉄は熱いうちに打て」なので飲みの翌日である。

私と友人は午前10時に「今日の昼に会いに行きます。無理なら別に会わなくても大丈夫です」とだけ連絡して、車で彼の住む町に向かった。片道2時間の海沿いの町だ。

私と彼女はカーナビの目的地を市役所にして、ゲラゲラ笑いながらだだっ広い国道を走った。トランプ大統領のモノマネが2周目に差し掛かる頃、彼の町についた。相変わらず薄灰色の空だったが、あちこちに新しい建物が並んでいた。

 

市役所では古墳時代の石器やパネルが展示されていた。冷やかしで入った私達は、受付の痩せた男性に声をかけられて土器の拓本講座に参加することにした。会いたかった友人ははその場にいなかったが、LINEで連絡したところ市役所まで来てくれることになった。

3人とも全然歴史には興味がなかったが、職員さんが熱心に話をしてくれて、結局2時間そこにいた。古墳の話を真面目に聞いたり、地元で見つけた城跡の話をしたり、ともかくとても楽しかった。市役所から出た後も、熱が冷めず駐車場でひとしきり話して笑顔で私達は別れた。そして、その直後にまたもや金を返していないことに気づいた。

 

改めて電話したところ、彼は「また飲みに行ったときに返してくれればいいよ」と言って聞かなかった。私と友人は自分たちの無計画に呆れながらも、彼のその言い分が嬉しかった。また絶対に飲もうと思う。次は3年よりもっと近いうちに。