好きになった

 大学時代から生活の多くをインターネットにつぎ込んできたにもかかわらず、SNSにどっぷり浸かるようになったのは去年4月マストドンを始めてからで、私はそのときすでに32歳になっていた。

 成人してずいぶんたってからSNSを知って、やばいくらいにそれに沈み込んでいたら知らぬ間に沢山知り合いができた。友人と呼べるような人もできた。そして、人と接する中で、どうも自分には「表現したい」という感情があるんだってことが分かって、毎日チマチマと下手なイラストをアップするようになった。

 学生の頃イラストは描いていたが、「趣味」と言えるようなものでもなかった。しかし、SNSに出会って、気まぐれに猫の絵をアップしていたら、私の落書きを「すてきだ」と評価してくれる人が現れた。なんとわたしのファンだと言う。信じられない。

 

 もともとお調子者の気質があり、褒められるの嬉しくてチマチマとキャラクターの落書きをアップし続けている。そのうちにどんどん欲が出てきて、「あれが描きたいな」とか「もっとうまくなりたいな」とか思うようになった。もしかしたら、これって趣味って言ってもいいのかもしれない。

 趣味を持つのには才能が必要で、私にはその才能がどうにも乏しいようだ。だからこうして「趣味」と言われるようなものができたこと自体がすごく新鮮で、面白い。「好きなもの」がある人にはうまく伝わらないかもしれないけど、「好き」になることは結構難しいのだ。

 「好き」は合理的じゃないから、ときどき秩序の邪魔をする。だから、秩序の中に生きるとき、好きなものがあるってことはリスクになる。安全に生きようと思ったら、何も好きじゃないほうが合理的なんだと思う。

 でもなんか最近どうにも落書きしてるとやっぱりちょっと楽しいので、私は貴重な人生の時間を合理的に生きずに、楽しいお絵描きに費やしてしまう。それってすごく人間ぽくて、自分の知らない自分なので、(人からどう評価されるかは分からないけど)楽しい気持ちが続けばいいな、好きという気持ちをいつかもっと深く知ることができたらいいなと思っている。